前理事長 ご挨拶
CAE懇話会 前理事長 田中 豊喜

“理事長退任にあたって“
CAE 懇話会      
田中 豊喜    
 このたび、理事長を退任することになりました。2002年に特定非営利活動法人CAE懇話会発足以来約7年の間、ご縁を賜りまして、理事長を務めさせて頂きました。先ずは、ご支援、ご協力を頂いた理事、幹事をはじめとする会員の皆様に心から感謝の意を申しあげます。前身の関西CAE 懇話会を含めると9年にもなります。この間、トラブルなどもありましたが、浅学、微力の私を強力にバックアップして頂いた皆様に重ねて御礼を申し上げます。
 この10年の間計算機性能とCAE 技術の向上に伴いCAE が普及し、製造業におけるCAE の役割が大きく変化しました。解析のツールから、実験のツール、設計・開発のツール、生産技術のツールへと役割を拡大しものづくりの現場に貢献するようになってきました。従来は解析のスペシャリストがベンダー開発のソフトを利用しかつ自社のニーズに合ったソフトを開発し、トラブルシューティングなど社内ニーズに対応していました。CAE普及の流れから設計者など非スペシャリストが増加し、構造、熱流体、音響、非線形や連成問題などの適用領域の拡大、難解なCAE 技術の理解と活用技術修得が課題となりました。
 CAE 懇話会はこの課題に応えるため基礎から応用技術講演会、解析塾、CAE ユーザー/ベンダー交流会、パネルディスカッション、実験とCAE などの場を提供してまいりました。また従来、設計・試作の繰り返しにより開発製品の完成度を高めていましたが、最近では、設計の初期段階でCAE を多用し開発製品の完成度を高めるフロントローディング設計の役割を担い、CAE がものづくりの現場で確固たる地位を確立してきました。自動車や電子機器産業を中心に、時間短縮、コストダウン、品質向上に寄与し始め、経営からも一定の評価が得られ、開発のラインの中でCAE の活用が進んでおります。
 CAE がものづくりに更に貢献するためには、多くの工学分野(医工、電磁気、環境etc.)やプロセス分野(企画、設計、製造etc.)、周辺分野(品質工学、制御、データマイニングetc.)との知の構造化と統合が必要となってきました。そのために、CAE 懇話会のモットー(遺伝子)である「自由闊達でBoundaryless な、知と心の交流」が益々重要な時代だと思います。心の交流で大切なのは、感謝と共生(自利利他)の心で、この心が気付きやひらめきを産み、より絆の強い交流(幸運)に導くと言われています。今後、スパコンによる先端的ものづくり技術開発、計算と技術者の品質保証、中小企業へのCAE 普及などの重要度が高まり、知と心の交流の場を提供するCAE 懇話会の役割は、益々向上いたします。
 リーマンショックを機に、社会(経済界、産業界)が大きく変動し、新しい時代が始まりました。CAE 懇話会も新しいリーダーのもとに、新しく進化することが期待されます。幸い新理事長の平野徹さんは、社内外で実績を高く評価され、CAE とその周辺分野に論理的で高い見識を有しかつ日本人の心に造詣が深い方で、三顧の礼をもって引き受けて頂きました。私自身、CAE 懇話会で活動して本当に良かったと思っています。お陰で、多くの仲間や友人に出会い楽しい時間を共有し、教えられ学ばせて頂きました。退任後も、特別顧問として自由な立場で参加させて頂きますのでよろしくお願いいたします。
 最後に、皆様も、CAE 懇話会に入って本当に良かったと思われるようになって頂けたら幸いです。
 



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