AIが加速する創薬・生命科学 ~AlphaFold2の衝撃とTransformerアルゴリズム |
大上 雅史 東京工業大学 情報理工学院 ohue@c.titech.ac.jp |
深層学習に代表されるAI(機械学習)技術の生命科学や化学領域への応用は、近年爆発的な広がりを見せている。タンパク質の立体構造をアミノ酸配列情報から予測するAlphaFold2の登場は、タンパク質立体構造に関係する研究者のみならず、生物学や情報学の研究者が広く注目する一種の「祭り」を引き起こした。当然、AlphaFold2を活用した研究成果の報告は多く見られるようになり、生命科学研究では常用ツールとなった。AlphaFold2にはTransformerをはじめとするコンピュータビジョンや自然言語処理分野の知識がふんだんに応用されている。 本講演では、AlphaFold2を軸に、AIが創薬・生命科学分野へもたらす革新の可能性について議論したい。我々は、AlphaFold2を活用した標的結合ペプチドの設計手法1, 2 や、抗体CDR配列設計手法3 などの検討を進めてきた。また、低分子創薬や天然物創薬に資するAI技術開発も同様に行っており、タンパク質間相互作用を阻害するための低分子設計指針4 や分子生成5、グラフ深層ニューラルネットワークに基づく標的活性予測と解釈可能性の追求6, 7 などの計算手法を開発してきた。いずれも、いかに有望そうな分子を計算によって創成するかが焦点となっている。AIによる予測はあくまで予測であり、時には嘘も混じるため、どの範囲まで信じられるか、どのように使えば有効に働くかなど、使う側も「うまく使う」ことが求められる。これからの時代に必要なAI技術の形を、ディスカッションできれば幸いである。 References 1. Kosugi T, Ohue M. Solubility-aware protein binding peptide design using AlphaFold. Biomedicines, 10(7): 1626, 2022. 2. Kosugi T, Ohue M. Kosugi T, Ohue M. Design of cyclic peptides targeting protein-protein interactions using AlphaFold. Int J Mol Sci, 3. Ueki T, Ohue M. Antibody Complementarity-Determining Region Sequence Design using AlphaFold2 and Binding Affinity Prediction Model. In Proc. PDPTA’23, 2023. 4. Kosugi T, Ohue M. Quantitative estimate index for early-stage screening of compounds targeting protein-protein interactions. Int J Mol Sci, 22(20): 10925, 2021. 5. Ohue M, Kojima Y, Kosugi T. Generating potential protein-protein interaction inhibitor molecules based on physicochemical properties. Molecules, 28(15), 5652, 2023. 6. Kengkanna A, Ohue M. Enhancing Model Learning and Interpretation Using Multiple Molecular Graph Representations for Compound Property and Activity Prediction. In Proc. IEEE CIBCB 2023, 2023. 7. Sugita S, Ohue M. Drug-target affinity prediction using applicability domain based on data density. In Proc. IEEE CIBCB 2021, 9562808, 2021. |